■「白えびせんべい」開発の裏話

 

「有磯(ありそ)せんべい」の中にある「白えびせんべい」の試作品は、平成元年10月25日に作られました。恐らく、これが日本で最初の「白えびせんべい」だと思います。

初めて開発した「白えびせんべい」は生臭さが残り、はらわたまで焼けず、商品として食べて頂けるとはとても思えないものでした。第1号の商品は現在も当店に保管されておりますが、当時の私は割とあっさり商品化を断念したものです。

それから4年後、他店から依頼があって再び「白えびせんべい」の開発に挑戦することになりました。 白えびは非常に繊細で、傷み易く、処理に手間取ると頭の部分が黒くなり、扱いに難しい品物でした。また、本当に新鮮な白えびでないと生臭さが取れないことも分かりました。

業者さんの協力を得て、幾度かの失敗を重ねながらようやく現在の商品に近い風味のあるおいしい白えびせんべいを生み出すことができたのですが、当店はOEM(相手ブランドの名前で商品を供給する)の立場でありました。

更に数年後、OEMの立場を離れ、独自に販売する道を辿ることに致しましたが、すでに「白えびせんべい」という商標を使うことはできません。 そこで、富山湾で獲れる「ズワイガニ」や「ほたるいか」を使ったせんべいも開発し、「白えびせんべい」と共に「有磯せんべい」として世に送り出すことにしたのです。

2年前には富山の深層水から取ったミネラル豊富な塩を使用し、現在の「白えびせんべい」となっております。


 

■「草楽せんべい」開発の裏話

 

富山市内に大法寺(だいほうじ)という慶長11年(1606年)日行が創立したお寺があります。ここは第2代富山藩主前田正甫(まさとし)公所縁の寺で、藩主の菩提寺なのですが、その本堂脇に樹齢100年を越すイチョウの大木があります。実はこの木の「イチョウの葉」を「草楽せんべい」の原材料として使用させていただきました。

このご縁は、富山医科薬科大学の森田直賢名誉教授 のご紹介によるもので、「草楽せんべい」の商品開発においても先生の助言を頂きました。

少し具体的なことを申しますと、イチョウの葉でエキスを作り、そのまま使用すると作用が強すぎてカブレに似た症状がでる場合があるとのこと。葉と言えども人の体質によってはアレルギー皮膚疾患を起こすことも考えられるので、「チューリップせんべい」のようにそのまま葉をつかうのではなく、しかるべき処理を施し、微粉末にしてから使用するようにと指導を頂きました。

「草楽せんべい」は薬都富山を象徴するせんべいとして開発したもので、「イチョウ」の他に「熊笹」と「ハト麦」、そして富山県産の大豆を使用した「おから」が入っています。

イチョウの葉は、末梢血管障害の改善、高血圧の調整、冷え症の改善、記憶力を向上させるための健康食品として注目されています。

熊笹は、加齢臭予防対策だけでなく、口内炎や疲労回復などにも効果があり、肌荒れがよくなる、便秘が治るなどの効果が期待できると言われています。

ハト麦は、胃のもたれ、食欲不振に効果があり、利尿作用あることから、むくみ、筋肉痛、神経痛、リュウマチに対する効果の他に、肌のトラブル解消や、がん予防にも効果があると言われています。

こう書くと、何だか薬臭いせんべいではないかと思われるかもしれませんが、ほんのり甘みのあるクッキーのようなせんべいに仕上がっています。

若い方にもご年配の方にも食べて頂いたのですが、味の評判はすこぶる宜しく、歯が弱くなった方にも食べやすいとご好評を頂きました。

発売以来、長年ご愛顧頂いておりました「草楽せんべい」は残念ながら2020年3月31日をもって終売となりました。


 

■「幻魚(げんげ)せんべい」開発の裏話

 

「美味しんぼ」というグルメ漫画に取上げられ有名になったのかどうかはわかりませんが、富山県や石川県あたりでしか知られていなかった幻魚が、最近は都会の方でも天ぷらや一夜干しなどでよく食されるようになったようです。

その幻魚を使ってせんべいを造ろうとしたは、私の富山へのこだわりがあったからです。

まず、これをせんべいに使うには「すり身」にする必要がありました。富山は「かまぼこ」でも有数の生産地ですが、某かまぼこメーカーに話を持ち込んだところ、幻魚のすり身など見たことも聞いたこともないと言われました。

そこで富山県食品研究所に依頼し、すり身の硬さにするための配合を指導してもらいました。その上で配合をかまぼこメーカーに伝え、幻魚のすり身を作り上げたのです。

海の味わいとせんべいの風味を出すためにイカ、エビの他に胡麻を入れ、「昆布」と「海苔」入りの2つの煎餅を作りました。

実は、ここからが本当の裏話なのですが、幻魚を使ったせんべいを作ろうと考えていた頃、富山市では全車両が超低床車両という全国初の本格的な軽量軌道交通(路面電車)である「富山ライトレール」が走ろうとしていた時でした。 富山市ではこれを記念したお菓子を求めていました。そこで「富山ライトレール」の車輪をイメージして、幻魚せんべいを「渦巻き状」にしたのです。

平成18年の4月に「富山ライトレール」が開通。「幻魚せんべい」もこの時から走り出しました。

「幻魚」は非常に淡白な魚で、網にかかっても値打ちのない魚でした。ところがグルメブームや健康ブームの後押しに加え、大学の研究で幻魚の魚皮やゼラチン質にコラーゲンがたっぷり含まれていることが分かり、更に知名度が上がりました。

当店の幻魚せんべいを食べて「美しくなる」とは保証できませんが(笑)、皆さんの「健康で、おいしい生活」を支える一助になりたいと願っております。


田中屋